引き上げ蓋手提げ小引き出し（戦後間もない昭和二十三年製作） 美術品・アンティーク・コレクション

引き上げ蓋の手提げ小引き出しです。
底には「昭和二十三年旧三月吉日　細工人　傍示　山中」の毛筆が。

昭和二十三年の製作と考えられる出品の小引き出しは、昭和レトロと称されネット上などで数多く見られる小引き出しとは、外箱・引き出し・塗り・金具などの外観、構造で大きく異なります。昭和よりさらに遡る、明治、江戸時代の雰囲気さえ感じます。

「傍示」は余り見かけない漢字で読みは「ほうじ」、歴史的地名でもあり、「ほうじ」の他「かたみ」とも読む珍しい名字でもあるようです。

地名に関しては、奈良県生駒市高山村の傍示（現在の高山町）は、かつての河内国かたの郡（現大阪府交野市）堺の垣内（かいと＝小集落としてまとまった地縁集団）の名で、古文書に由来があるとか。
一方、名字に関しては、全国でおよそ５０名のレア名字のようです。

「傍示」は名前ではなく地名と考えられ、生駒市高山村傍示の細工人山中氏の手により、昭和二十三年当時製作されたものだと思います。

金具は、上段の引き出しは、梅を思わせる５弁は鉄、中心のツマミ部は真鍮、中段、下段の引き出しの引き手は真鍮だと思います。
また、手提げの持ち手は金色の下地が一部露出していますが、所々の発錆の色合から真鍮ではなく鉄だと思います。
材質や漆塗かどうかなどに関しては、正確なところは分かりません。

７０年以上の経年であり、汚れやキズ、欠け、塗りの剥げ、引き上げ蓋の少々のガタなどは否めませんが、引き出しとして利用に支障をきたすようなヒビ、割れ、変形などはほぼありません。

大きさ（㌢）重さはおよそ次の通りです。三段の引き出しは内寸です。
外箱：横幅２３、奥行２１．５、高さ２７．２（３１．５持手含）／
上段：横幅左１０．９、右７．２、奥行１６．２、深さ５／
中段：横幅１９．５、奥行１６．５、深さ６／
下段：横幅１９．５、奥行１６．５、深さ８／
重さ：２５３０㌘（引き出し含む）／

昭和レトロ感よりもアンティーク感のある引き上げ蓋の手提げ小引き出しです。経年、使用による劣化は否めませんが、利用には支障はないと思います。インテリア兼小引き出しとしていただければ幸いです。